ここ数年、高金利通貨の代表格として長期投資の成功例を残したのがメキシコペソです。メキシコペソ円を保有する方は、高金利でのスワップ利益に加えて、右肩上がりの相場で為替利益でも大きく稼いできました。
本記事では、メキシコとトルコの政策金利の特徴を比較し、似ている点と異なる点を整理し、それぞれの通貨が長期投資に適しているかを検討します。
メキシコペソの概要
メキシコの経済はここ数年、米国との貿易や製造業を中心に成長を続けてきました。特に自動車産業が活発で、安定した雇用や輸出が家計を支えたことでメキシコペソも順調に上昇してきました。
インフレの課題を抱えていたもの、柔軟な金利政策でインフレ率を抑えつつ通貨の安定を維持してきました。
メキシコペソの推移
- 2020年2月を底値として堅調に推移
- 2020年のコロナ以降はボラティリティも限定的で長期のスワップ投資向き
<メキシコペソ円 リアルタイムチャート:月足>
メキシコの金利政策の推移
- 2025年時点で政策金利は10.00%
- 通貨高にともなって金利も4.00%→11.25%に上昇
- 通貨の安定後も高金利を維持
<メキシコの政策金利10年間の推移>


ここ数年、スワップ投資の勝ち組は圧倒的に「メキシコペソ」!
トルコリラの概要
トルコは過去10年で経済的な成長を遂げた一方、経済の不安定さや所得格差拡大が深刻化しました。異例の金融政策によって招いた「通貨リラの下落」や「高インフレ」が現在も大きな課題となっています。
2023年に発足した経済チームによって通貨の安定が生まれつつあるが、高金利政策からの脱出にはリスクが伴う状態と言えます。
トルコリラの推移
- 10年間の下落トレンドを継続
- 価格が1/10になる大きな下落幅
<トルコリラ円 リアルタイムチャート:月足>
トルコリラの金利政策の推移
- 2025年時点で政策金利は45.00%
- 2024年の50.00%から段階的に金利が低下中
- これまでは金利コントロールの失敗で通貨安が加速
<トルコの政策金利10年間の推移>





スワップ収益が吹き飛ぶほどの下落幅で長期投資が成立せず。。
<メキシコペソとトルコリラの比較>
メキシコペソ/円(MXN/JPY) | トルコリラ/円(TRY/JPY) | |
---|---|---|
為替レート | 約7.5円~8円 | 約4.3円~4.7円 |
必要証拠金(10万通貨) | 約30,000円 | 約17,000円 |
スワップ(10万通貨/日) | 約230円 | 約430円 |
政策金利 | メキシコ:約11.25% | トルコ:約45% |
リスク | 中程度(米国経済や原油価格の影響を受けやすい) | 高い(政治・経済リスクが大きい) |
特徴 | ・安定した高金利通貨 | ・非常に高いスワップ ・価格変動が大きい |
メキシコがトルコと似ている点
①インフレ抑制としての高金利政策
メキシコもトルコも両国ともに、高いインフレ率に対応するために政策金利を活用しています。
<メキシコ>
2022年には過去10年で最も高いインフレ率(7.90%)に達し、その後メキシコ中銀がインフレ率を目標値(3%±1%)に収束させるために、金利を11.25%(現在は10.00%)まで利上げしました。
<トルコ>
トルコも2022年に最も高いインフレ率(85.5%)となり、いまだに60.92%と高い状態が続いています。そのハイパーインフレを抑制するためトルコ中銀は政策金利を50.00%まで引き上げ対応しました。(現在は45.00%)



目的は同じでも、インフレ率・金利共にトルコが異常な状態
②通貨防衛としての高金利政策
両国とも、高金利政策が通貨価値を支える重要な役割を果たしています。
メキシコペソは、米国との良好な関係性もあり、高金利政策を取ることで価値を維持しています。
一方のトルコリラも資本流出を防ぎ、外貨準備を維持するためにも高金利政策を採用しています。ただ、輸入依存型の経済構造などがリスクとなりトルコリラは通貨価値を下げています。
③新興国通貨のボラティリティ
メキシコペソとトルコリラはどちらも新興国通貨として、他の通貨に比べてボラティリティが高めです。
メキシコペソ円は2020年のコロナショック時に約30%の急落を記録し、トルコリラ円は「トルコリラショック」と呼ばれる2018年の通貨危機時に1年間で約40%以上の下落を記録しました。
メキシコがトルコと違う点
①輸出主導型の堅実な経済
メキシコは米国との貿易関係を軸にした輸出主導型経済であり、ニアショアリング(近接地生産)の恩恵を受け、経済は安定的に成長を続けています。
これに対し、トルコはエネルギー輸入依存度が高く、経常収支赤字が通貨価値を圧迫しています。
②安定したインフレ率
メキシコのインフレ率は2024年時点で5.8%と安定しており、メキシコの中央銀行が行う堅実な金融政策が上手くいっている状態です。
一方でトルコは60%以上の高インフレが続いており、購買力低下が深刻です。
③政治及び金融政策の安定性
メキシコ中銀は独立性が高く、市場からの信頼も厚いです。
これに対し、トルコでは中央銀行への政治的介入が頻繁であり、市場からの信頼性が低下しています。
メキシコペソよりトルコリラに魅力がある点
トルコの高い成長率
トルコの魅力は成長力です。
2024年は3.0%となっていますが、5年平均成長力では約4.9%あり、メキシコの約2.6%を大きく凌いでいます。2024年の世界の名目GDPランキングで19位に位置して、15位のメキシコに遅れを取っているものの、購買力平価GDP (PPP)ではメキシコを追い抜きました。
指標 | メキシコ | トルコ |
名目GDP | 約1.79兆ドル | 約1.34兆ドル |
購買力平価GDP (PPP) | 約2.87兆ドル | 約2.95兆ドル |
実質GDP成長率 | 約2.9% | 約3.0% |



通貨の評価は低いが、経済規模やポテンシャルは大きい!
リラの高いスワップポイント&資金効率
トルコリラ/円はメキシコペソ/円よりも高いスワップポイント収益が期待できます。
2025年1月28日時点で10万通貨あたり年間約135,050円(1日あたり370円計算)のスワップポイント収益を想定されます。
一方、メキシコペソ/円では10万通貨で約73,000円(1日あたり200円計算)となります。かつ、必要証拠金もトルコリラの倍になります。



圧倒的なスワップポイントが為替差損を凌駕する!
さらに、リラの必要証拠金はペソの半分近くになるが、通貨あたりのスワップは倍近くになるため、資金効率としてはトルコリラ円の方が3.5倍〜4倍ほど上手に手元資金を運用できることになる。
短期的な値上がり益の可能性
トルコリラは大幅な下落後に反発する可能性があり、値上がり期待があります。ただし、上値の余地が大きいものの下落トレンドの継続もリスクではあります。



個人的には現在のトルコリラ円は「長期的な大底」だと判断しています!
まとめ
メキシコペソとトルコリラには共通点もありますが、その背景や信頼性には大きな違いがあります。
メキシコペソは安定した経済基盤と堅実な金融政策から長期投資に適しています。ただ、トルコリラも高いスワップポイント収益を狙え、成長力から今後トルコリラ自体の価値が上昇する期待も持てます。