トルコリラが10年間下落し続けた3つの要因
①エルドアン大統領の「低金利政策への固執」
2014年に就任したエルドアン大統領は、「金利は悪の母」という独自の考えを持ち、高インフレにもかかわらず金利引き上げを拒否。
通常、インフレが進行すると金利を引き上げて通貨価値を安定させるが、低金利を維持し続けたことでトルコ経済にダメージを与えました。
②急上昇するインフレと通貨の下落
エルドアン大統領の低金利政策の結果、トルコのインフレ率は急上昇し、2023年にはインフレ率が65%を超え、トルコリラの価値はさらに下落。金利を引き上げるべきタイミングでエルドアンが利下げを決行したことで、驚異のハイパーインフレと通貨下落が進みました。
③中央銀行の独立性の弱体化
エルドアン大統領は、中央銀行の独立性を認めず、自分に反対する総裁を解任し、頻繁に総裁を交代させました。このような行動により、トルコの金融政策は一貫性を欠き、リラの価値を下げると同時に海外投資家の信頼を失いました。
トルコ経済&トルコリラ相場の3つのポジティブ要因
トルコリラ円の下落トレンドが終わったと判断できる主な要因は以下の3つです。
①高金利政策の継続
トルコ中央銀行はインフレ対策として高金利政策を実施&維持しています。この政策は、外資を呼び込む要因となり、通貨の下支えになって底堅い相場が始まっています。なお、現時点では2025年1月までは政策金利50.0%を維持する方向で進んでいます。
<トルコの政策金利の推移>

参照:豊トラスティ証券
②インフレ率の改善
トルコのインフレ率は過去数年間非常に高い水準にありましたが、最近は改善傾向にあります。インフレ率が落ち着き始めると、経済の安定化につながり、通貨価値も安定する可能性が高まります。
<トルコのインフレ率の推移>

参照:tradingeconomics.com
③新総裁の改革
2024年2月に新たに就任したトルコ中央銀行総裁は、長期政権下にあるエルドアン大統領の権限を分離し、独裁的な政策に従うことなく、より市場原理に基づいた金融政策を取り始めています。
以上の3つの要因により、今後の見通しは明るいのではと考えています。
2015年から毎年2桁%以上下落していたトルコリラ円が、2024年は8%程度の下落で落ち着いており、10年ぶりに1桁%の下落に収まる可能性があります。(2024年10月現在)

長くて暗いトンネルの出口がいよいよ見えてきたかな
新総裁の「インフレ抑制」と「価格安定」政策
トルコリラ円の下落が止まる可能性がある要因の中で、私が注目するのは上記の要因③「新中央銀行総裁の改革姿勢」です。
ファティ・カラハン総裁はアメリカのペンシルベニア大学で経済学を学び、ニューヨーク連邦準備銀行やアマゾンでの経験を持つ国際的な経済学者で、トルコ中央銀行の総裁に就任しました。
彼が推進する政策の目標となるゴールは、トルコのインフレ抑制と通貨の安定を取り戻すことです。彼は、「(その実現のために)必要であればさらなる利上げも行う」と明言しており、トルコリラの価値を安定させることを最優先しています。
なお、カラハン氏は、エルドラン大統領に対して「独立した金融政策」を約束させた上で総裁に就任しており、これまで続いたエルドラン大統領による独裁政策を受け入れない姿勢を明確にしています。



新総裁の政策により「リラは底打ちした」と判断する市場関係者も多い!